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【帰ってきたヒトラー】感想「コメディと見せかけた社会派傑作映画」90点

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ヒトラーが現代によみがえる?笑うな危険?コメディかな?

そう思って見始めたら,かなり考えさせられる深い映画でした.マジで面白い映画だからとりあえず見てください!

少しネタバレしつつ感想を書いていきます.(ネタバレがある所では注意喚起するので,まだ見ていない人も安心してじっくり読んでください.)

 

帰ってきたヒトラーはこんな映画


『帰ってきたヒトラー』映画オリジナル予告編

一言でいうとヒトラーが現代にタイムスリップしてきて,ものまね芸人として(本人にその気はないが)大衆の心をつかんでいき,昔と同じように民主的なやり方で指導者になっていく映画.

前半は現代に蘇ったヒトラーの行動のおかしさを楽しめるコメディですが,後半はハラハラした展開の社会派ドラマです.

気づいたら,ヒトラーが支持されていく様子がとても自然で,見ていて,「自分もヒトラーに魅了されているのではないか」と不気味な恐ろしさを感じました.

あらすじ

ヒトラーの姿をした男が突如街に現れたら?

リストラされたフリー記者に発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者のドギモを抜く。

自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、大衆の心を掴み始める

しかし、皆気づいていなかった。

彼がタイムスリップしてきた〈ホンモノ〉で、70年前と全く変わっていないことを。

そして、天才扇動者である彼にとって、
現代のネット社会は願ってもない環境であることを―。

HPより引用,一部変更)

リアリティあるヒトラー

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引用元:公式HP

ヒトラー役はオリバー・マスッチという俳優が演じています.リアリティを出すために,あえて無名の俳優を起用したようです.

本物のヒトラー感を楽しみたいなら,吹替よりも字幕がおすすめ.実際の演説とそっくりですよ.

感想・見どころ

実際にドイツでヒトラーを解き放つ

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引用元:公式HP

ヒトラーが,町の人々に現代の政治に関する不満をインタビューする場面があるのですが,あれは実際にマスッチが扮するヒトラーが一般の人にインタビューしていたようです.

  • よくできたコスプレだと面白がる人
  • 一緒に写真撮影する人
  • 中指を突き立てる人

本当に様々な人がいてドイツのリアルを感じることができました.

知っておくべき背景知識

インタビューの中で人々は口々に人種・移民問題を語り始めます.しかし,ドイツでは本来そうした発言はタブーなのです.

そもそも,人種に対する批判がタブー視される社会風土が培われた原因はドイツの戦後処理にまで遡ります.

ドイツは戦争の責任を全てナチスに押し付け,国としての責任はないとして清算したのです.

実際,ドイツはユダヤ人への迫害といった人種差別「ナチス犯罪」については謝罪していますが,他国への侵略といった「戦争犯罪」については認めていません.

当時戦った兵士は称賛されるべきで,ドイツ国防軍は清廉潔白であるとされています.つまり,「悪いのは全てナチスだ」とされているのです.

こうした理由から,ドイツで人種差別に繋がるような話題を口にすることはタブーとなっています.

インタビューで人々が「移民は拒否すべきだ」と語っていたのは,「ヒトラーになら話しても大丈夫だろう」という感情があったのでしょう.

(マスッチ扮する)ヒトラーを通して,ドイツ人が右極(自分の国さえ良ければいいという思想)に傾いていることが浮き彫りとなりました.

世界的に見ても
・トランプ氏が「アメリカンファースト」を掲げる
・イギリスのEU離脱
など,右極化が進んでおり,この映画はそうした状況に警鐘を鳴らしていると言えます.

ヒトラーに魅了されていく恐ろしさ

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引用元:公式HP

先ほども話したように,前半はコメディタッチで,ヒトラーが巻き起こす行動に何度も笑わされてしまいます.

  • 臭い軍服をクリーニングに出す際,パンツまで脱いでしまう
  • クリーニング屋で借りたダサい服を着て偉そうに仁王立ちする
  • 初めて触れたインターネッツ(ドイツ訛り)に目をまん丸にして驚く

なんか,憎めないキャラなんですよね笑 でも,だんだん様子がおかしくなります.後半になるにつれ,独裁者としての顔があらわになっていくのです.

・初めてテレビを見て「プロパガンダに最適だ」というヒトラー
・SNSを利用して,たくみに世間の人間の心をつかんでいくヒトラー
・親衛隊まで組織するヒトラー

ヒトラーのカリスマ性と現代のメディアが組み合わさると,ものすごいうねりを生み出すんだなと感じました.

さらに,ヒトラーは当たり前のように,ユダヤ人を差別します.心の底からユダヤ人は差別されて当然と思っています.

でも,一番怖かったのは,そんな
・人種差別的側面
・独裁者としての側面
を知っていたのに,なんだかんだ前半はヒトラーを受け入れてしまっていた自分がいたこと.

ヒトラーは民主的な方法で選ばれています.ある側面から見るとカリスマ性があり,人を引き付ける魅力があるのです.

現代でも気づかぬうちに,私たちは第二のヒトラーを生み出しているかもしれません. 

衝撃のラストシーン(ネタバレ)

上でも少しネタバレしましたが,話の面白さを損なうわけではありません.ただ,ラストシーンはネタバレされると面白さが半減してしまいます.

灰色背景部にネタバレを書きます.

まだ見ていない方はamazon prime の見放題かDVDで見ちゃってください!

(以下ネタバレ)
ヒトラーの姿をした男が本物だと気づいた主人公サヴァツキは,この世から彼を葬るべく,ビルの屋上で追い詰める.

怪物め」というサヴァツキ.

それなら怪物を選んだ人間を恨め.彼らの本質は私と同じだ」と答えるヒトラー.

サヴァツキは引き金を絞り,発砲する.撃たれてビルから落ちたはずのヒトラーはなぜかサヴァツキの真後ろに立っていた.そしてこう言う.

私は人々の一部なのだ

画面が引いていき,これが映画の撮影だということが分かる.実際にはサヴァツキは頭が狂った人間として,牢屋に入れられていたのだ.

一方,ヒトラーはそっくり芸人として,人気を博し,大衆に受け入れられていた.自動車の中から道路わきの人に手を振りながら,こうつぶやく.

「状況は私に微笑んでいる。ドイツで、ヨーロッパで、世界中で…。機は熟した。」

 

ヤバくないっすか!このラスト...!(語彙力)

怪物を選んだ人間を恨め.彼らの本質は私と同じだ.」この言葉が強く頭に残りました.

実際,ヒトラーは民主的な選挙で選ばれたのです.そもそも,ユダヤ人差別はずっと前から存在していて,ヒトラーはそれを利用して国民を扇動したにすぎません.

国民の声を聴き,それを強制力を持たせて実行しただけだとも言えます.

ヒトラーは私たちの中にいます.彼に全ての責任を押し付け,自分たちの感情に目を向けないでいると,どこからともなくヒトラーは現れるでしょう.

 

総合評価:90点

かなりの高評価です.

ヒトラーを題材にした映画は他にもありますが(ヒトラー~最後の12日間~など)
シリアスになりすぎない
でも重要なメッセージ性がある
点が素晴らしいです.

ラストシーンは「そう来たか」というまさかの展開.物語としても十分楽しめます.

ただ,前半のコメディチックなシーンはやや冗長に感じてしまうかも.まあ,そのシーンがあってこそ,後半のヒトラーのカリスマ性が際立つので,必要な構成ですが.

全体的には素晴らしく,ヒトラーという存在を伝える映画史に残る傑作と言えるでしょう.

ちなみに,ナチスドイツやヒトラーが題材となった映画としては「ウェイヴ」もおすすめ.人は簡単に操られることが分かります.