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映画【ノーカントリー】ネタバレ解説 作品中の7つの謎を徹底考察

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アカデミー賞受賞映画「ノーカントリー」は人によって解釈が変わる作品でした.映画オタク東大生が作中の7つの謎を徹底解説していきます.

この記事を見れば,「あのシーンはどういう意味があったんだ?」というモヤモヤがスッキリ解決しますよ!

 

映画「ノーカントリー」あらすじ

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 狩りをしていたルウェリン(ジョシュ・ブローリン)は、死体の山に囲まれた大量のヘロインと200万ドルの大金を発見する。危険なにおいを感じ取りながらも金を持ち去った彼は、謎の殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)に追われることになる。事態を察知した保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は、2人の行方を追い始めるが…。

 一言で言っちゃうと,冷徹な殺し屋シガーが邪魔するものをひたすらなぎ倒しながらモスに迫っていく話.

分かりにくい描写が多く,ネットでは「あーでもない,こーでもない」と活発に議論されています.それがこの映画の面白さと言えるでしょう. 

 

映画「ノーカントリー」ネタバレ解説

シガーはルールを大事にする

一見するとシガーは不気味な殺し屋で,ただ闇雲に出会った人々を殺しているかのように見えます.

でも,実際には彼なりのルールがあることが理解できます.殺す必要のない一般人にはコイントスを迫り,その結果次第で殺すかどうかを決めているのです.

で,そのコイントスを迫る基準が,「その人自身が決められたルールに従っているかどうか」なんですよ.

例えば

  • シガーと話していて店を早めに閉めようとしたおじいさん.彼は普段の営業時間を守らなかったため,シガーにコイントスを要求されています.
  • 一方,シガーにモスのいる部屋がどこか聞かれたおばちゃん.彼女は「ルールだから宿泊者の情報は教えられません」とシガーの要求を三度つっぱねます.彼女はコイントスを要求されることはありません.

このようにルールを重んじるシガーが一度だけルールを破ることがあります.それが次に紹介するシーン.

カーラは殺されたの?

カーラはモスの奥さんね.直接手を下すシーンはないので,実際殺されたのかどうかは分かりにくいです.が,結論から言うと殺されています.その理由を解説します.

シガーは「殺す必要はないがモスとの約束を守るため殺すのだ」と言って,いつもどうり,コイントスを要求する.

カーラは「決めるのはコインじゃない.あなたよ」と言う.

次のシーン,玄関でシガーは靴の裏を確認する.

最後,玄関先でシガーは靴の裏に血が付いていないか確認しているのです.ハットを被った男を殺す別のシーンでも,シガーは流れ出た血が付かないように注意しています.

伏線がちゃんと回収されているのが面白いですよね.

さらに,注目してほしいのがシガーはコイントスをさせずに殺してしまった点.これは自分で決めたルールを破ったことになります.

次のシーンで交通事故に遭ったのは,ルールを自ら破った見返りと解釈することもできるのです.

モスは誰に殺されたの?

実際に殺された描写はなく,ベルが現場近くを通りかかったときに,メキシコ人たちが急いで逃げ去る様子が映されているのみです.

そもそも,モスは
・麻薬取引をしていたメキシコ側の人間
・殺し屋シガー
の二人に追われていました.

あの描写だけだと,モスはメキシコ側の人間に殺されたのかと思ってしまいますが,実際にはシガーに殺されたのだと推測できます.

なぜなら,現場にメキシコ人の男が倒れていたからです.殺したのがメキシコ側なら,仲間を置いて逃げるはずがありません.

シガーと撃ち合いになって命からがら逃げだしたのだと想像できます.

ベルが戻ってきたときシガーはいたの?

モスが殺されたモーテルにベルが戻るシーン.シガーが隠れている描写があるのですが,ベルが実際,扉を開けてみるとそこには誰もいません.

このシーンについてネット上では,様々な解釈があります.

  • シガーはいなかった(隠れている描写はベルの妄想だった)
  • シガーとベルは入れ違いになった


僕個人としては「シガーは実際あの部屋にいて,ベルが洗面所を見に行っている隙抜け出した」説を推します.

このモーテルの部屋の前には事件があったことを示す黄色のテープがありました.ベルが部屋に入ったとき,そのが壁一面に映っていたのです.

しかし,ベルが洗面所を見に行って戻ってきたときには,このテープの影は無くなっています.これはシガーがベルに見つからないように抜け出したことを示しています.

ベルは映画の冒頭でこのように語っていました.

「魂を危険にさらすべき時はOKと言わねばならない」

この部屋でのシーンはベルがシガーとぎりぎりのところですれ違い,魂を危険にさらしていたことになります.

このような,本当に注意してみないと分からないネタが隠されているのがこの映画の面白さかなと思います.

金は誰の手に渡ったの?

結論から言うと,シガーです.ベルが殺害現場のモーテルでシガーと入れ違いになるシーンで,換気口がコインで外されたカットがあります.

前のシーンでもモスが金を隠していた換気口をシガーがコインで開けていたので,今回もシガーが金を取ったと判断できます.

さらに,シガーが交通事故に遭うシーンでは,通りがかった少年から100$で服を買い取っています.

これはモスが血だらけになりながら検問所付近で若者から服を買い取るシーンと重なりますね.つまり,シガーが金を持っているという暗示になっているのです.

ベルの夢の解釈

ラストシーン,ベルは二つの夢を見たと言います.これは人それぞれ解釈が違うと思いますが,僕の考えを書きます.

1.親父に金をもらって無くした夢

ベルは物語での登場回数こそ少ないですが,話全体の語り部として重要な役割を果たしています.

そんな彼は自分にはどうしようもない悪の化身であるシガーと対峙して,無力感にさいなまれ,保安官を引退してしまいます.

お金を無くす夢は親父からもらった信念をなくして,保安官を引退したベルのやるせない気持ちを暗示しているのでしょう.

2.雪山を歩いていると父に追い抜かされた夢

この夢では親父さんは追い越した後も,焚火をして待っていると語られています.

この焚火が何を表しているかが焦点になるでしょう.

ずばり,一つめの夢でなくした
・信念
・正義
・希望
ではないでしょうか.

「進む先には希望が待っているから,どうしようもない現実を頑張って歩いていこう」という前向きな気持ちが込められていると言えます.

・ネガティブな1つ目の夢
・ポジティブな2つ目の夢
その対比が印象的でした.

映画の題名「ノーカントリー」の真の意味

原題は「No Country for Old Men」(老人のための国はない)という意味なんです.老人とはトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官「ベル」のことでしょう.

アメリカでは,犯罪が凶悪化し,老人であるベルにはどうしようもない国になってしまったということです.

この映画の主人公は金を持ち逃げしたモスでもなく,冷徹な殺し屋シガーでもなく,物語の語り部である保安官ベルということもできます.

映画「ノーカントリー」総合評価&感想:70点

はっきり言って,さっぱり分からない.何だあの終わり方はって感じです.でも,映画を見てワイワイ議論したり,解説をネットで見るのが好きな人にはたまんないんだろうなとも感じます.

映画そのものよりも,そこから感じ取れる解釈や感情の多様さを楽しめる人向けの映画でしょう.

「映画をた後にも余韻を残す」それこそがアカデミー賞受賞という栄冠を勝ち取った要因なのかもしれません.

一方で分かりにくい映画が好みでない人も
・シガーの圧倒的な恐怖
・天災のように周りの人間を傷つけていく様
を見ているだけでそこそこ面白いです.

普通の映画とは違う,まるで小説のような作品でした.